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相続した不動産を売却したとき、確定申告が必要かどうかで迷う方は少なくありません。譲渡所得の有無や利用する特例によって申告の要否が変わるほか、必要な書類も多く、期限内に正しく申告しないとペナルティが発生することも。
この記事では、相続不動産の確定申告に必要な書類や手続き、節税に活用できる特例をわかりやすく解説します。
相続不動産を売却したとき、確定申告が必要かどうかは譲渡所得の有無で決まります。まずは申告の要否を正しく判断しましょう。
不動産を売却して利益が出た場合、確定申告が必要です。譲渡所得は「売却価格-(取得費+譲渡費用)」で計算し、この金額がプラスになれば申告しなければなりません。
取得費は被相続人が購入した当時の価格を引き継ぎ、譲渡費用には仲介手数料や測量費、解体費用などが含まれます。
譲渡所得に対しては、所有期間が5年を超える場合は約20%、5年以下の場合は約39%の税率で所得税と住民税が課されます。相続した不動産は被相続人の所有期間を引き継ぐため、多くのケースで長期譲渡所得として約20%の税率が適用されます。
申告期限は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。
売却価格が取得費と譲渡費用の合計を下回り、譲渡所得がゼロまたはマイナスになった場合、原則として確定申告は不要です。たとえば、2000万円で売却し、取得費と譲渡費用の合計が2500万円だった場合、譲渡所得はマイナス500万円となり、納税額はゼロです。
ただし、特例を利用する場合は、税額がゼロになっても確定申告は必須です。空き家の3000万円特別控除や取得費加算の特例などを適用するには、必ず申告しなければなりません。
申告しないと特例が適用されず、本来払わなくてよい税金を支払うことになるため注意しましょう。
確定申告が必要なのに申告しなかった場合、無申告加算税や延滞税が課されます。無申告加算税は本来の税額に対して15~20%が加算され、悪質と判断されれば最大40%になることもあります。
延滞税は納付が遅れた期間に応じて課され、年率は時期によって変動します。申告漏れは税務署に必ず発覚するため、期限内に正しく申告することが大切です。

確定申告には多くの書類が必要です。どこで入手するか、何を準備すべきかを事前に把握しておきましょう。
確定申告書と譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)は、税務署の窓口または国税庁のホームページからダウンロードが可能です。確定申告書には、給与所得や事業所得など他の所得も含めて記載するほか、譲渡所得の内訳書には売却した不動産の所在地や売却価格、取得費、譲渡費用などを詳細に記入します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の指示に従って入力するだけで申告書を作成できます。また、e-Taxを使えば自宅からインターネット経由で申告できるため便利でしょう。初めての方は税務署で相談しながら作成するのもおすすめです。
売買契約書の写しは、売却価格を証明するために必要です。仲介手数料や測量費、解体費用などの領収書も、譲渡費用として計上するために保管しておきましょう。
また、被相続人が不動産を取得したときの売買契約書や領収書があれば、取得費を正確に計算できます。
登記事項証明書(登記簿謄本)は法務局で取得でき、不動産の所在地や面積、所有者の情報を証明します。相続した不動産であることを示すため、遺産分割協議書や相続登記完了後の登記事項証明書も用意しておくとよいでしょう。
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として使用できますが、実額を証明できれば税負担を抑えられます。
空き家の3000万円特別控除を利用する場合、被相続人居住用家屋等確認書が必要です。この書類は不動産所在地の市区町村の窓口で取得します。取得費加算の特例を利用する場合は、相続税申告書の写しと、相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書を提出しましょう。
居住用財産の3000万円特別控除を利用する場合は、住民票の除票など居住していたことを証明する書類が求められます。

確定申告は3つのステップで進めます。売却後すぐに準備を始め、期限内に申告を完了させましょう。
まず、譲渡所得を計算します。売却価格から取得費と譲渡費用を差し引き、利益がいくらになるかを確認しましょう。取得費は被相続人が購入した価格ですが、契約書が見つからない場合は売却価格の5%を概算取得費として使用できます。
譲渡費用には、仲介手数料、測量費、建物の解体費用、売買契約書の印紙代などが含まれます。これらの領収書を集めて合計額を算出します。計算の結果、譲渡所得がゼロ以下であれば、原則として申告は不要です。ただし、特例を利用する場合は申告が必須となります。
譲渡所得が発生した場合、利用できる特例がないか確認します。空き家の3000万円特別控除、居住用財産の3000万円特別控除、取得費加算の特例などが主な選択肢です。
それぞれの特例には適用要件があり、売却時期や物件の状態、相続税の有無などによって使える特例が異なります。特例を利用すれば、数百万円単位で税負担を軽減できることもあるため、自分のケースで何が使えるか早めに確認しましょう。複数の特例が該当する場合は、併用できるかどうかも確認が必要です。
必要書類が揃ったら、確定申告書と譲渡所得の内訳書を作成します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って入力するだけで申告書を作成できます。e-Taxで電子申告すれば、税務署に行かずに自宅から提出可能です。
申告期限は売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。郵送で提出する場合は、期限日の消印有効となります。申告後、納税が必要な場合は3月15日までに納付しなければなりません。振替納税を利用すれば、指定した口座から自動的に引き落とされます。

相続不動産の売却では、節税効果の高い特例を利用できます。それぞれの特例の概要と適用条件を理解しておきましょう。
被相続人が一人で住んでいた家を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3000万円を控除できます。昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物で、相続開始直前まで被相続人が一人で居住していたことが条件です。
売却時には、建物が現行の耐震基準を満たしているか、または建物を解体して更地にする必要があります。相続開始から3年以内に売却し、売却価格が1億円以下であることも要件です。被相続人居住用家屋等確認書を市区町村で取得し、確定申告時に提出しなければなりません。
自分が住んでいた家を売却する場合、譲渡所得から最大3000万円を控除できます。相続した実家に相続人が住んでいた場合も、この特例を利用できます。住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。
この特例は所有期間に関係なく利用でき、譲渡所得が3000万円以下であれば税額はゼロになります。ただし、売却した年の前年および前々年にこの特例を受けていないことが条件で、3年に1回しか使えません。空き家特例とは併用できないため、どちらか有利な方を選択しましょう。
相続税を支払った方が相続開始から3年10か月以内に不動産を売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できます。取得費が増えれば譲渡所得が減少し、結果として譲渡所得税が軽減される仕組みです。
適用するには、相続税申告書の写しと相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書を確定申告時に提出します。空き家の3000万円特別控除や居住用財産の3000万円特別控除とは併用できないため、どの特例が最も有利か計算して選択することが重要です。

確定申告をスムーズに進めるため、押さえておくべきポイントを確認しましょう。
税金の特例には、それぞれ売却期限が設けられています。空き家の3000万円特別控除は相続開始から3年以内、取得費加算の特例は3年10か月以内に売却しなければなりません。この期限を過ぎると特例が使えず、大きな税負担が生じます。
相続手続きや遺産分割協議に時間がかかると、気づいたときには期限を過ぎているケースもあります。そのため、特例を利用したい場合は、相続発生後すぐに売却に向けて動き出すほか、期限が近づいている場合は専門家に相談して迅速に手続きを進めましょう。
特例を適用した結果、税額がゼロになる場合でも、確定申告は必ず行わなければなりません。申告しないと特例が適用されず、本来払わなくてよい税金を支払うことになります。
また、譲渡所得がマイナスの場合でも、特例を利用するなら申告が必要です。確定申告は義務であり、怠ると無申告加算税や延滞税が課されるため、必ず期限内に申告しましょう。申告書の作成が難しい場合は、税理士に依頼することをおすすめします。
確定申告の手続きは複雑で、特例の適用判断や書類の準備には専門知識が必要なため、不安な場合は、税理士に相談するのがおすすめです。税理士に依頼すれば、最も有利な特例を選択し、正確な申告書を作成してもらえます。
費用はかかりますが、節税効果や手続きのスムーズさを考えれば、結果的にプラスになることも多いでしょう。また、税務署でも確定申告の相談を受け付けているため、無料で基本的なアドバイスを受けることも可能です。早めに相談して、安心して申告を進めましょう。
相続した不動産を売却した場合、譲渡所得が発生すれば確定申告が必要です。必要書類は多岐にわたるため、売却後すぐに準備を始めましょう。空き家特例や取得費加算の特例など、適用できる控除制度を活用すれば大幅な節税が可能ですが、期限内の売却と確定申告が必要です。
弊社では、士業と連携して相続登記手続きのトータルサポートを行っております。手続きに必要な書類に関するご相談から、相談者様のニーズに応じた士業のご紹介まで対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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