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相続した不動産を売却する際、税金計算のカギを握るのが「取得費」です。取得費とは被相続人が不動産を取得した際にかかった費用のことで、正確に算出しないと余分な税金を払うことになります。
しかし、取得費に何が含まれるのか、建物の減価償却はどう計算するのか、わからない方も多いでしょう。
この記事では、相続不動産の取得費の基本から計算方法、不明な場合の対処法、節税に使える特例までわかりやすく解説します。
取得費は譲渡所得税を計算する際に重要な役割を果たします。正しく理解して、適切に計算しましょう。
不動産を売却したときの譲渡所得は「売却価格-(取得費+譲渡費用)」で計算します。取得費とは、不動産を取得したときにかかった費用の総額です。取得費が大きいほど譲渡所得が小さくなり、税負担が軽減されます。
譲渡費用は売却時にかかった仲介手数料や測量費などを指しますが、取得費は購入時点の費用です。取得費を正確に把握することで、払いすぎを防ぎ、適正な税額で申告できます。取得費の計算を誤ると、本来より多くの税金を払うことになるため注意しましょう。
相続した不動産の取得費は、相続人が相続した時点ではなく、被相続人が購入した時点を基準に計算します。たとえば、親が30年前に2000万円で購入した不動産を相続して売却する場合、取得費は2000万円が基準となります。
ただし、建物については減価償却費を差し引く必要があるため、購入価格がそのまま取得費になるわけではありません。土地は減価しないため購入価格をそのまま使用しますが、建物は経年劣化を考慮して取得費を計算する点が特徴です。

土地と建物では取得費の計算方法が異なります。それぞれの計算ルールを理解しておきましょう。
土地は時間が経過しても劣化しないため、被相続人が購入した当時の代金がそのまま取得費になります。購入代金には、土地の購入価格のほか、購入時の仲介手数料、測量費、造成費用、登記費用、不動産取得税なども含まれます。
たとえば、土地を1500万円で購入し、仲介手数料50万円、測量費20万円、登記費用10万円がかかった場合、土地の取得費は1580万円です。これらの費用を証明する契約書や領収書が残っていれば、正確な取得費を計算できます。
建物は時間の経過とともに価値が減少するため、購入価格から減価償却費を差し引いた金額が取得費となります。減価償却費は、建物の構造(木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など)や用途(居住用、事業用)によって異なる耐用年数を使って計算します。
減価償却費の計算式は「建物購入価格×0.9×償却率×経過年数」で求められるほか、償却率は建物の構造によって決まります。
経過年数は、被相続人が購入してから売却するまでの期間を指します。
具体例で計算してみましょう。被相続人が30年前に木造住宅を1000万円で購入し、相続後に売却する場合を考えます。木造の非事業用建物の償却率は0.031です。
減価償却費は「1000万円×0.9×0.031×30年=837万円」となり、建物の取得費は「1000万円-837万円=163万円」です。このように築年数が古いほど減価償却費が大きくなり、取得費は小さくなることから結果として譲渡所得が増え、税負担が重くなる点に注意が必要です。

取得費には購入代金以外にもさまざまな費用が含まれます。何が取得費になるのかを正しく理解しましょう。
取得費に含まれるのは、不動産の購入代金、仲介手数料、登記費用、不動産取得税、測量費、造成費用、建築費用などです。購入後の増改築費用やリフォーム費用も、建物の価値を高めるものであれば取得費に加算できます。
一方、固定資産税や修繕費、管理費などの維持管理にかかった費用は取得費に含まれません。また、住宅ローンの利息も取得費には含まれないため注意が必要です。取得費として認められるのは、不動産そのものの取得や価値向上に直接関係する費用に限られます。
相続後、相続人が支払った費用のうち、取得費に含められるものと含められないものがあります。相続登記の費用や相続税は取得費には含まれません。ただし、相続税を支払った場合は、取得費加算の特例により相続税の一部を取得費に加算できることがあります。
売却のために行った測量費や建物の解体費用は、取得費ではなく譲渡費用として計上します。譲渡費用も譲渡所得の計算で差し引けるため、節税効果があります。領収書を保管し、取得費と譲渡費用を明確に区別して計上しましょう。
取得費を証明する書類としては、売買契約書、領収書、請負契約書、登記費用の領収書などが必要です。被相続人が保管していた書類を探し、相続後も大切に保管しておきましょう。
書類が見つからない場合は、法務局で登記簿謄本の閲覧や登記事項証明書を取得し、購入時期を確認できます。また、不動産会社や金融機関に問い合わせて、契約書のコピーを入手できるケースがあるほか、通帳の記録から購入代金の支払い履歴を確認する方法も有効です。

購入時の書類が見つからず取得費が不明な場合でも、いくつかの対処法があります。
取得費が不明な場合、売却価格の5%を概算取得費として使用できます。これを「5%ルール」といいます。たとえば、3000万円で売却した場合、概算取得費は150万円です。
この方法は計算が簡単で書類が不要なため、手続きは楽になります。ただし、実際の取得費より大幅に低くなることが多く、譲渡所得が大きくなって税負担が重くなる点がデメリットです。可能な限り実額での取得費を証明することが望ましいでしょう。
概算取得費5%を使うと、ほとんどのケースで税負担が増えます。たとえば、3000万円で売却し、譲渡費用が100万円の場合、概算取得費150万円では譲渡所得が2750万円になります。長期譲渡所得の税率約20%を適用すると、税額は約550万円です。
一方、実際の取得費が2000万円であれば、譲渡所得は900万円となり、税額は約180万円に抑えられます。その差は約370万円にもなります。このため、購入時の資料を探したり、合理的な方法で取得費を推測したりすることが大切です。
取得費が不明な場合でも、合理的な方法で推測できれば税務署に認められることがあります。建築年次と構造が分かれば、当時の建築費相場から推定できます。国土交通省の「建築統計年報」などの公的資料を参考にする方法が有効です。
また、市区町村の固定資産税評価額や路線価から逆算して取得費を推定する方法もあります。不動産鑑定士に依頼して、購入当時の時価を鑑定してもらうことも可能です。費用はかかりますが、節税効果が大きい場合は検討する価値があります。
相続税を支払った方は、取得費加算の特例を利用できます。大幅な節税につながる制度です。
取得費加算の特例は、相続税の一部を譲渡所得の計算上、取得費に加算できる制度です。相続税を支払った方が相続財産を売却した場合、支払った相続税のうち、その財産に対応する部分を取得費として計上できます。
たとえば、相続税を500万円支払い、そのうち不動産に対応する相続税が200万円だった場合、この200万円を取得費に加算できます。取得費が増えれば譲渡所得が減少し、結果として譲渡所得税が軽減される仕組みです。
この特例を適用するには、相続または遺贈により財産を取得していること、その財産について相続税が課税されていること、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していることが必要です。
相続税の申告期限は相続開始から10か月以内のため、実質的には相続開始から3年10か月以内に売却を済ませなければならないほか、この期限を過ぎると特例が使えなくなるため、早めに準備を進めましょう。また、確定申告時には相続税申告書の写しと計算明細書の提出が求められます。

取得費の計算にはいくつかの注意点があります。正しく理解して、適切に対応しましょう。
建物の減価償却費は、被相続人が購入してから売却するまでの期間全体で計算します。相続から売却までの期間が長いほど、減価償却費が増えて取得費が減少し、税負担が重くなります。
たとえば、被相続人が20年前に購入した建物を相続し、10年後に売却する場合、減価償却費は30年分計算されます。早めに売却すれば減価償却費が少なく、取得費を高く保てるため、税負担を抑えられます。売却を検討しているなら、早めの決断がおすすめです。
複数の相続不動産を売却する場合、取得費加算の特例や3000万円特別控除など、どの特例をどの不動産に適用するか検討が必要です。特例には併用できないものがあり、選択を誤ると節税効果が減ってしまいます。
譲渡所得が大きい不動産には3000万円特別控除を優先し、譲渡所得が小さい不動産には取得費加算の特例を使うなど、戦略的に判断しましょう。税理士に相談して、最も節税効果が高い組み合わせを選ぶことが大切です。
相続登記の司法書士報酬、遺産分割協議にかかった弁護士費用、相続税の税理士報酬などは、取得費に含めることができません。これらは相続手続きにかかった費用であり、不動産の取得そのものに直接関係しないためです。
ただし、相続税は取得費加算の特例により、一定額を取得費に加算できます。また、売却のために支払った測量費や解体費用は譲渡費用として計上できるため、領収書を保管しておきましょう。取得費と譲渡費用を正しく区別して申告することが大切です。
相続不動産の取得費は購入代金や登記費用が基本で、建物は減価償却後の額です。相続税を納めた場合は取得費加算の特例が使えます。早めに専門家に相談して正確な計算と特例活用を心がけましょう。
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