不動産コラム 不動産営業の ”つぶやき”

相続した不動産を売却する際の注意点とは?期限・手続き・税金で失敗しない方法

相続した不動産を売却する際の注意点とは?期限・手続き・税金で失敗しない方法

相続した不動産を売却する際、手続きの期限や税金、名義変更など、注意すべきポイントが数多くあります。何も知らずに進めると、特例が使えなかったり思わぬ課税を受けてしまうケースも少なくありません。

この記事では、相続不動産の売却で失敗しないために押さえるべき注意点を、手続きの流れから税金対策まで、初心者にもわかりやすく解説します。

相続不動産売却の基本的な流れと期限

相続不動産を売却するには、複数の手続きを順番に進める必要があります。それぞれの手続きには期限があるため、全体の流れを把握しておくことが大切です。

遺言書の確認から売却までの手順

相続が発生したら、まず遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合はその内容に従い、ない場合は相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。協議がまとまったら遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印(実印)します。

次に、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する相続登記が必要です。登記が完了したら、不動産会社に査定を依頼して売却活動を開始し、買主が見つかれば売買契約を締結したのち決済・引き渡しを経て売却が完了します。売却した翌年には、確定申告を行って譲渡所得税を納税する流れです。

各手続きの期限を把握する

相続に関する手続きには、それぞれ期限が設けられています。相続放棄は相続開始を知った日から3か月以内、相続税の申告・納付は10か月以内に行わなければなりません。相続登記は2024年4月から義務化され、相続開始を知った日から3年以内に登記しないと過料が科される可能性があります。

税金の特例を利用する場合は、さらに厳しい期限があります。多くの特例には3年前後の期限が設けられており、これを過ぎると適用できなくなるほか、大きな税負担が生じる恐れがあるため、早めのスケジュール管理が大切です。

相続登記(名義変更)の注意点

相続不動産を売却する前に、必ず相続登記を行う必要があります。登記制度の変更点や必要書類について理解しておきましょう。

2024年4月から相続登記が義務化

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続開始を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。この義務化は、2024年4月以前に発生した相続にも適用されるため、古い相続案件も早急に対応が必要です。

相続登記を怠ると、不動産の所有者が不明確になり、将来的にトラブルの原因となります。また、売却時に登記が完了していないと買主に所有権を移転できないため、売却自体ができません。相続が発生したら、できるだけ早く登記手続きを進めることをおすすめします。

被相続人名義のままでは売却できない

不動産を売却するには、売主が登記上の所有者である必要があります。被相続人名義のままでは売却できないため、必ず相続人名義への変更(相続登記)を完了させなければなりません。

相続登記には、戸籍謄本や遺産分割協議書、印鑑証明書などの書類が必要です。書類の収集に時間がかかることもあるため、売却を考えている場合は、相続発生後すぐに登記手続きを開始するようにしましょう。登記手続きが複雑な場合は、司法書士に依頼するとスムーズに進められます。

必要書類は分割方法で異なる

相続登記に必要な書類は、遺産分割の方法によって異なります。遺言書がある場合は、遺言書と被相続人の戸籍謄本、不動産を取得する相続人の戸籍謄本などが必要です。遺産分割協議を行った場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書も求められます。

法定相続分で相続する場合は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本が必要です。どの方法を選ぶかで必要書類が変わるため、事前に法務局や司法書士に確認しておくとよいでしょう。

売却のタイミングと税金の特例


相続不動産を売却するタイミングによって、利用できる税金の特例が変わります。節税効果を最大化するため、適切な時期を見極めることが大切です。

3年以内の売却を目指すべき理由

相続不動産の売却では、3年以内に売却することで大きな節税メリットが得られます。空き家の3000万円特別控除は、相続開始から3年以内の売却が条件です。また、取得費加算の特例は3年10か月以内に売却すれば、相続税の一部を取得費に加算できます。

これらの特例を利用できれば、数百万円単位で税負担を軽減できる可能性があります。相続手続きや遺産分割協議に時間がかかると、気づいたときには期限を過ぎているケースもあるため、早めの行動を心がけましょう。

小規模宅地等の特例との関係

相続税の計算では、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例により、土地の評価額を最大80%減額できます。ただし、この特例を適用した場合、相続税の申告期限から3年以内に売却すると、特例の適用が取り消される可能性があるケースもあります。

小規模宅地等の特例と売却時の特例の両方を検討し、どちらが有利か計算して判断する必要があります。相続税が多額になる場合は小規模宅地等の特例を優先し、譲渡所得が大きい場合は売却時の特例を選ぶなど、ケースバイケースで判断しましょう。

税理士に相談して、最も節税効果が高い方法を選ぶことをおすすめします。

親の家に住む場合と住まない場合の違い

相続した実家に相続人が住んでいた場合、居住用財産の3000万円特別控除を利用できます。この特例は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば適用可能です。

一方、相続人が親の家に住んでいなかった場合は、空き家の3000万円特別控除の適用を検討しましょう。ただし、空き家特例には築年数や耐震基準などの細かい要件があるほか、どちらの特例が使えるかで売却のタイミングや準備が変わるため、早めに確認することをおすすめします。

遺産分割方法による注意点

相続不動産を売却する際、誰の名義で登記するかによって手続きや税金が変わります。遺産分割方法ごとの注意点を理解しておきましょう。

共同登記と単独登記のメリット・デメリット

換価分割で不動産を売却する場合、相続人全員の共有名義で登記する方法と、代表者1人の単独名義で登記する方法があります。共同登記は公平性が明確ですが、売却時に相続人全員の署名・押印が必要となり、手続きに時間がかかることがあります。

単独登記は代表者が手続きを進められるため、スムーズに売却できるのがメリットです。ただし、遺産分割協議書に「換価分割のための便宜上の登記」と明記しないと、代表者への贈与とみなされ、贈与税が課される恐れがあるため、相続人の状況や売却スケジュールを考慮してどちらの方法を選択するか判断しましょう。

単独登記で贈与税を回避する方法

代表者の単独名義で相続登記を行う場合、贈与税を回避するには遺産分割協議書の書き方が重要です。「下記不動産は換価分割するものとし、便宜上、相続人Aの単独名義で相続登記を行う。売却代金から諸費用を控除した残額を、相続人A、B、Cが各3分の1ずつ取得する」といった記載をします。

この記載がないと、代表者が不動産を単独で相続し、後から他の相続人に現金を渡したとみなされ、贈与税が課される可能性があります。贈与税は税率が高いため、数百万円単位の税負担が生じることもあるでしょう。遺産分割協議書の作成時には、専門家に確認してもらうことをおすすめします。

共有名義売却は全員の同意が必要

相続人全員で不動産を共有する共有分割を選んだ場合、売却には全員の同意が必要です。1人でも反対すれば売却できないため、トラブルに発展しやすい分割方法といえます。

また、共有名義の不動産は、将来的に相続が発生するたびに共有者が増えていき、権利関係が複雑になる恐れがあります。売却を前提とするなら最初から換価分割を選び、早めに現金化することをおすすめします。やむを得ず共有にする場合は、売却時期や価格について事前に相続人間で合意しておくことが大切です。

税金計算に影響する取得費と所有期間

譲渡所得税の計算では、取得費と所有期間が重要な役割を果たします。相続不動産特有のルールを理解しておきましょう。

取得費は親の購入額を引き継ぐ

相続した不動産を売却する際の取得費は、被相続人が購入した当時の価格を引き継ぎます。たとえば、親が30年前に2000万円で購入した不動産を相続して売却する場合、取得費は2000万円として計算します。

取得費には、購入代金のほか、購入時の仲介手数料や登記費用、不動産取得税なども含まれます。また、建物部分は減価償却費を差し引いて計算するため、実際の取得費は購入価格より低くなることがあるでしょう。購入時の契約書や領収書が残っていれば、正確な取得費を計算できるため、探しておくことが大切です。

所有期間も親の購入日から計算

相続不動産の所有期間は、相続人が相続した日からではなく、被相続人が取得した日から計算します。所有期間が5年を超えると長期譲渡所得として約20%、5年以下だと短期譲渡所得として約39%の税率が適用されます。

相続不動産の場合、被相続人の所有期間を引き継ぐため、ほとんどのケースで長期譲渡所得となり、税率が低く抑えられます。これは相続不動産売却の大きなメリットといえるでしょう。

取得費が不明な場合の対処法

被相続人が不動産を購入した時期が古く、契約書や領収書が見つからないケースもあるでしょう。取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として使用できますが、実際の取得費よりも低くなることが多く、税負担が重くなる点に注意が必要です。

たとえば、3000万円で売却した場合、概算取得費は150万円となり、譲渡所得が大きくなってしまいます。可能な限り、購入時の資料を探したり、購入時期から推定したりして、実額での取得費を証明することをおすすめします。

スムーズに売却するための3つのポイント


相続不動産の売却を成功させるには、計画的な準備と専門家の活用が欠かせません。トラブルを避けてスムーズに進めるためのポイントを押さえましょう。

期限と書類を早めに確認する

相続不動産売却では、複数の期限と多くの書類が必要です。そのため、相続開始から3年以内という期限を意識し、逆算してスケジュールを立てるようにしましょう。遺産分割協議や相続登記に時間がかかると、特例が使えなくなる恐れがあります。

必要書類は、戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書、登記事項証明書、売買契約書など多岐にわたります。特に、被相続人居住用家屋等確認書など、市区町村で取得する書類は発行に数週間かかることもあるため、早めの準備が欠かせません。

信頼できる不動産会社を選ぶ

相続不動産の売却では、相続に詳しい不動産会社を選ぶことが大切です。一般的な不動産売却と異なり、相続登記や税金の知識が必要となるため、相続案件の実績が豊富な会社を選びましょう。

複数の不動産会社に査定を依頼し、査定額だけでなく、対応の丁寧さや提案内容を比較することをおすすめします。相続人が複数いる場合は、最低売却価格や売却期限について事前に相続人間で合意しておくと、売却活動がスムーズに進みます。

司法書士や税理士に相談してサポートを受ける

相続不動産の売却は、手続きが複雑で専門知識が必要です。相続登記は司法書士、税金や特例の適用は税理士に相談することで、正確かつ効率的に手続きを進められるでしょう。

特に、どの特例を選ぶべきか、遺産分割協議書の書き方は適切か、といった判断は専門家のアドバイスが不可欠です。費用はかかりますが、専門家に依頼することで節税効果が高まり、結果的にプラスになることも多いでしょう。早めに相談し、安心して売却を進めることをおすすめします。 

まとめ

相続した不動産の売却では、相続登記の義務化や税金特例の期限、遺産分割方法による贈与税リスクなど、注意すべきポイントが多くあります。特に3年以内の売却を目指し、早めに専門家に相談しながら進めることが重要です。必要書類を早期に準備し、相続人全員で最低売却価格などを事前に決めておくことで、トラブルなくスムーズな売却が実現できます。

弊社では、士業と連携して相続登記手続きのトータルサポートを行っております。手続きに必要な書類に関するご相談から、相談者様のニーズに応じた士業のご紹介まで対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

お役立ち資料

MET Design Homeのお役立ち資料を、
無料でダウンロード頂けます。

お問い合わせ

MET Design Homに無料で相談したい方は、
お気軽にお問い合わせください。

資料ダウンロード

無料サービス資料はこちら

資料をダウンロードする
無料相談

無料で相談したい方はこちら

無料で相談する
Fudousan Plugin Ver.5.7.0