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相続した不動産を売却する際、譲渡所得税や住民税などの税金がかかります。しかし、要件を満たせば大幅に節税できる特例が3つあることをご存じでしょうか。
この記事では、相続不動産の売却時にかかる税金の種類と計算方法、適用できる3つの特例について、適用要件や必要書類、具体的なシミュレーションまでわかりやすく解説します。
目次

相続した不動産を売却する際には、相続時と売却時のそれぞれで異なる税金がかかります。まずは、どのような税金が発生するのかを確認しましょう。
相続が発生した際、遺産総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税が課されます。不動産は相続財産に含まれるため、その評価額が相続税の計算に影響します。
相続税は相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付しなければなりません。不動産は金額が大きいため、納税資金の確保が課題となり、売却して納税資金に充てるケースも見受けられます。
相続した不動産を売却する際には、譲渡所得税と住民税が課されます。譲渡所得とは、不動産の売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた利益のことです。
取得費は被相続人が購入した当時の価格で、相続した場合はその取得費を引き継ぎます。また、譲渡費用には仲介手数料や測量費、建物解体費用などが含まれ、これらを差し引いた後に利益が出た場合、その金額に対して譲渡所得税と住民税が課されます。
譲渡所得の計算式は「譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)」です。
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として使用できます。譲渡所得に対する税率は、不動産の所有期間によって異なり、5年を超えるか以下かで大きく変わります。詳しい税率と所有期間の関係については、次の章で解説します。

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって大きく変わります。相続不動産の場合、所有期間の計算方法に特例があるため注意が必要です。
不動産の所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得に区分されます。短期譲渡所得の税率は約39%と高く、長期譲渡所得の約20%と比べると2倍近い税負担です。
所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点で計算します。たとえば、2020年7月に取得した不動産を2025年8月に売却した場合、実際の所有期間は5年を超えていますが、2025年1月1日時点では5年以下となるため短期譲渡所得に該当します。
相続によって取得した不動産の所有期間は、被相続人が取得した日から計算します。たとえば、被相続人が30年前に購入した不動産を相続してすぐに売却した場合でも、相続人の所有期間は30年として扱われるため、長期譲渡所得が適用されます。
この特例により、相続不動産の多くは長期譲渡所得として約20%の税率で済むケースがほとんどです。ただし、被相続人の取得時期が不明な場合は概算取得費を使用することになり、税負担が重くなる可能性があります。
相続税を支払った方が不動産を売却する場合、税負担を軽減できる「取得費加算の特例」があります。制度の内容と活用方法を見ていきましょう。
取得費加算の特例は、相続税の一部を譲渡所得の計算上、取得費に加算できる制度です。相続税を支払った方が相続財産を売却した場合、支払った相続税のうち、その財産に対応する部分を取得費として計上できます。
たとえば、相続税を500万円支払い、そのうち不動産に対応する相続税が200万円だった場合、この200万円を取得費に加算できます。取得費が増えれば譲渡所得が減少し、結果として譲渡所得税が軽減される仕組みです。
この特例を適用するには、以下の条件が求められます。
相続税の申告期限は相続開始から10か月以内のため、実質的には相続開始から3年10か月以内に売却しなければなりません。この期限を過ぎると特例が使えなくなるため、早めに動くことが大切です。
取得費加算の特例を適用するには、確定申告時に必要書類を提出する必要があります。主な書類は、相続税申告書の写し、相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書、譲渡所得の内訳書などです。
確定申告は、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに行います。特例を適用することで税額がゼロになる場合でも、確定申告は必須です。申告を忘れると特例が適用されないため注意しましょう。

自分が住んでいた不動産を売却する場合、譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例があります。相続不動産でも条件を満たせば適用可能です。
居住用財産の3000万円特別控除は、自分が住んでいた家やその敷地を売却した際、譲渡所得から最大3000万円を控除できる制度です。たとえば、譲渡所得が2500万円の場合、全額が控除されて税額はゼロになります。
この特例は所有期間に関係なく利用でき、相続した実家に相続人が住んでいた場合も対象となります。ただし、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。
この特例が適用できるのは、自分が実際に居住していた家屋とその敷地です。別荘やセカンドハウスなど、主に趣味や保養のために所有していた物件は対象外となります。
また、この特例を受けるためには、売却した年の前年および前々年にこの特例を受けていないことが条件です。3年に1回しか使えないため、複数の不動産を売却する場合は、どの物件に適用するか慎重に検討する必要があります。相続した実家に相続人自身が住んでいなかった場合は、空き家特例の適用を検討しましょう。
居住用財産の3000万円特別控除を受けるには、確定申告時に譲渡所得の内訳書、売買契約書の写し、登記事項証明書などを提出します。住民票の除票など、その家屋に居住していたことを証明する書類も必要です。
被相続人が一人で住んでいた家を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、別の3000万円控除が適用できます。
被相続人居住用財産の3000万円特別控除、通称「空き家特例」は、相続した空き家を売却する際に譲渡所得から最大3000万円を控除できる制度です。この特例は、空き家の増加を抑制し、既存住宅の流通を促進する目的で設けられました。
相続人自身が住んでいなかった実家でも、被相続人が一人で住んでいた家であれば対象となる点が、居住用財産の特例との大きな違いです。ただし、建物の築年数や耐震基準、売却時期など、細かな要件が定められています。
空き家特例が適用される家屋は、昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物で、相続開始直前まで被相続人が一人で居住していたことが条件です。区分所有建物(マンション)は対象外となります。
売却時には、建物が現行の耐震基準を満たしているか、または建物を解体して更地にする必要があります。また、相続開始日から相続開始の日の属する年の翌年12月31日までの3年間に売却し、売却価格が1億円以下であることも要件です。
空き家特例を適用するには、確定申告時に被相続人居住用家屋等確認書が必要です。この書類は、不動産所在地の市区町村の窓口で取得します。
相続開始時の被相続人の住民票除票、家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたことを証明する書類なども求められます。
耐震改修を行った場合は耐震基準適合証明書、解体した場合は解体証明書を添付しなければなりません。発行までに数週間かかることもあるため、早めに準備を始めましょう。

特例を最大限活用するために、期限や併用ルール、申告の必要性について理解しておくことが重要です。
相続不動産売却時の特例には、それぞれ適用期限が定められています。取得費加算の特例は相続開始から3年10か月以内、空き家特例は相続開始から3年以内に売却しなければなりません。この期限を過ぎると、どれだけ他の要件を満たしていても特例は適用されず、本来受けられたはずの節税効果が得られなくなります。
相続手続きや遺産分割協議に時間がかかり、売却が遅れるケースもあるため、早めに動くことが大切です。
3つの特例は、それぞれ併用できるものとできないものがあります。取得費加算の特例と居住用財産の3000万円控除は併用できません。取得費加算の特例と空き家特例も併用不可です。
居住用財産の3000万円控除と空き家特例も併用できないため注意が必要です。どの特例を選ぶべきかは、譲渡所得の金額、相続税額、物件の状況などによって変わります。
一般的には、譲渡所得が3000万円以上の場合は3000万円控除の方が有利ですが、複数の特例が適用可能な場合は、税理士に相談して最も有利な選択をすることをおすすめします。
特例を適用した結果、税額がゼロになる場合でも、確定申告は必ず行わなければなりません。申告しないと特例が適用されず、後から税務署に指摘されて追徴課税を受ける可能性があります。必要書類を揃えて期限内に申告しましょう。書類の準備や計算が複雑な場合は、税理士に依頼することで正確な申告ができ、節税効果を最大化できます。
相続不動産を売却する際は、取得費加算の特例、居住用財産の3000万円控除、空き家の3000万円控除という3つの節税制度があります。それぞれ適用要件や期限が異なり、併用できる特例とできない特例があるため、自分のケースでどれを選ぶべきか慎重に検討しましょう。
税額が大きくなりやすい不動産売却では、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
弊社では、士業と連携して相続登記手続きのトータルサポートを行っております。手続きに必要な書類に関するご相談から、相談者様のニーズに応じた士業のご紹介まで対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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