Cafe bar at 水辺の廃墟ホテル – 上海, 中国
今回は秋が深まる上海から書いています。こちらに引っ越すことになり、人づてに夏は暑く冬は寒いと聞いて戦々恐々としていた私にとって、秋の気候の良さは嬉しい誤算でした。九州は鹿児島と同程度の緯度に位置するこの都市は、少なくとも直近2週間以上雨が降っておらず、湿度は常時(快適度が高いとされる)50%前後。私の中の「上海」という街のイメージにはなかった”爽やか”という言葉がぴったりの気候です。(在住の知人によれば春と秋は快適とのこと。旅行を計画される方は、この時期を狙うといいかもしれません。)
まだ少し住んだだけの私が今、この街を形容するとすれば《賑やかで華やかな街》でしょうか。中国の一大金融都市かつ観光地ということもあり、どこにいても人の気配を感じる街です。
有名観光地の中には「周りを見渡しても人しか見えない!」というスポットも。人混みがあまり得意でない私は、日々地図とにらめっこしては人の少なそうな”人気なしスポット”を探索中です。(笑)
日本では旅行先として話題に上ることが少ない上海ですが、実際に来るとしっかりとした観光地でした。
上海は旧租界地(外国人が行政権や警察権を握っていた時代のある場所)であることから、街じゅうに19世紀頃建てられた西洋建築が見られ、おそらく一般的なイメージとして抱かれる「中国的風景」とは少し異なる街並みも擁しています。(も、と書いたのは「これぞ中国」という風景もそこここに存在しているからです。こちらも折を見て訪ねていけたらと思います)
多くの西洋建築がその文化的価値を認められ「歴史的建造物」として保存されており、その中だけをリノベーションしたレストランやショップなどが数多く存在します。
この街はどうやら、グルメやファッションというより、歴史的建物を含めた”街を散策して楽しむ”場所のようです。
今回はそんな上海の街を徘徊している際に見つけた、元廃墟(であろう建物)をリノベーションしたホテルのカフェバーをご紹介します。
上海で最も有名な観光地の一つ、外灘(ワイタン)。街を東西に分ける大河、黄浦河左岸の金融街[租界地時代の西洋建築をそのまま利用した街並みが特徴的]と、右岸に発展した新しい高層ビル群の夜景を求めて、休みなく人が訪れるスポットです。夕刻、上海電波塔の点灯時刻近くになると、広々とした川沿いの遊歩道は人で溢れ、大賑わいに。
この黄浦河は上海の街を海から内陸へ向けて流れているのですが、実はこのメインとなる「外灘」以外にも、上海の川沿いエリアが充実していることはあまり知られていません。
外灘の南側に位置する老馬頭(ラオマートウ)。ここは昔の船着場やそれに準ずる施設の建物が元々存在し、現在は内部を改装して飲食店やホテル、結婚式場などが営まれているようです。
こちらは外灘とは打って変わって、人が少なく落ち着いた印象。ちらほらと川沿いを散策する人々を見かけますが、まだ開発中という位置付けなのか、旅行書でも積極的に紹介しておらず観光客も殆どいない様子。
河川の幅が非常に広いため対岸まで一定距離があり、大きく空が開けている上に、遊歩道は綺麗に整備されて、現状ではウォーキングやランニングに最適。さらに建物のポテンシャルを活かして文化的要素を取り入れれば、人の滞留が生まれて一帯がより魅力的になりそう・・と勝手な妄想が膨らみます。
こんな良い環境の場所があまり使われていないなんて、(個人的には有難いけど)すごく勿体ない。知る人ぞ知るの域を出ていないのがもどかしい。
プラプラ散策した後、休憩がてら側道沿いに見つけたカフェに入りました。
外観は一見廃墟と見紛うようなコンクリート造の建物ですが、すぐにそれがリノベーションされた何らかの施設であることがわかりました。建物のアール形状にぴったりと合わせる形で、元の建物の上に新しく増設されたフロアが乗っていたからです。このユニークで器用な仕掛けには驚きを禁じえませんでした。
近づくと、ブティックホテルであることが判明。こんな外観のホテル、ずるすぎる。
カフェに入ろうと突っ切ったエントランスロビーの格好よさに危うくテンションが振り切りそうに。
店内はおそらく家具好きな誰かによって集められた、型違いの黒いチェアの並ぶ空間でした。色を統一するだけで、個性的な形状の椅子たちにもまとまりを感じさせるから不思議です。つい「どの椅子に座ろうかな〜」とウキウキ選んでしまいました。
チェアが黒で統一されていた以外は、床は石、壁やテーブルは木と、”素材感”で空間が構成されていました。白[壁]、黒[椅子・引き戸など建具の枠]、木目[壁・テーブル・椅子の脚]、石[床]、金属色[据え置きライト・テーブル足]と、しっかりルールのある空間でした。
その上で、そのルールに縛られているわけでもなく適当に雑貨が置かれていたのも楽しかったです。主役は空間ではなく、中にいるバーテンダーでありお客さんだということを思い出させてくれるような、少しの雑多さ。世界観を貫きすぎないユルさがあります。
ひとしきりゆっくりした後、日も暮れてきた頃に川沿いに戻りました。やっぱり侮れない雰囲気で、俄然上海のウォーターフロントが気になり始めた私。
引き続き、探索を続けていきます。