映画監督の倉庫カフェ – 台北, 台湾

こんにちは。突然ですが、台湾にやってきました。

このブログは、筆者が随時、今いる場所からお届けする「世界スペース紀行」です。 書き手は今のところ1人ですが、今後増えていくかも(いかないかも)しれません。

少々ざっくりしていますが、そんな感じでまいりますので、よろしくお見知り置きくださいな。

登場するものは「スペース(空間)」であることだけ決まっているのですが、その他は未定。

「科学」ほど大それたものではなく「紀行」あたりで、楽しく皆さまと共有していけたらなぁと思っています。

台北の街角で見つけた増設サンルーム(?)。オフィスの休憩スペースなのか、ソファとプリンターが見えます。きっとここで休憩するの、屋根の上の猫になった気分でしょうね。台風被害の多い台湾ですが、それより日常の居心地の良さを優先しちゃう、向こう見ずなガラスの薄さにロックを感じざるを得ません。

とりあえず1人目の書き手である私について少し。

元々都内の会社で不動産勤務をしていましたが、数年前から転勤族の家族について日本を離れることに。当初3年は台湾に暮らし一旦帰国、今年からは上海での暮らしをスタートさせています。といった状況から、日常的に色んな場所を移動していることが多く、また元来空間好きの血も相まって、目に入る色んな場所がどうも気になる・・ せっかくなのでちょこっと写真を撮って、気になったことなど書き留めてみようかと。

いきなりカオスな空間に足を踏み入れてしまいました。。

ということで、記念すべき1件目は台北のとあるカフェを取り上げます。 行ったことのある人はご存知だと思いますが、台湾は小さな島国。

本土は九州ほどの面積で、人口も2300万人とちょうど九州と同じくらい。首都である台北も、福岡に似た規模感のコンパクトシティです。

東西南北、約5キロ圏内にあらゆる要素がぎゅっと凝縮された街。政治も経済もカルチャーも、台湾のメインストリームと呼ばれるものは全てこの5キロ圏内のエリアから発信されているといっても過言ではありません。

そんな場所なので、TVドラマを観ていても「あ、ここあの店じゃん」「これ、あそこの道路だ」と一目でわかってしまうほど。TVの中身が現実の延長線上にあるような、現実と非現実の境界がちょっと曖昧な世界で台湾人は生きているような感じがします。

錆びれたゾウがノスタルジックな入り口を発見

(余談ですが、街が狭すぎてどの場所もどの店も、皆が「行ったことがある」状態って面白いです。自分と他の人に根付く共通認識としての情報が似ているだけで、その人を完全な他人と思えなくなります。台湾の人がすごくフレンドリーだったり、ボーダーレスだったりする理由はこういう環境が影響しているような気がします。)

今回ピックアップするこのカフェも、現実世界の中に作られた非現実のような空間です。 オーナーは台湾人の映画監督で、元は映画のセット製作のために収集した照明や家具などの一時置き場として使っていた倉庫だったそう。

台湾の建物は石造りで古くから残っているものも多く、レトロな雰囲気と相性○。チラリとのぞく店内の白熱灯がクラシカルな空気を醸し出しています。

建物自体が台湾の古い石造り建築で、側面のレンガ貼りが格好良い。 1階は収集の延長線上?で集まった古道具などを販売する店舗が展開されています。(但し積極営業の意思は感じられず、何が売り物でそうでないのかもわからない状態)

ドナルドの後ろ姿がちょっとおどろおどろしいですが、面白い物が見つかりそう。。

ぐるりと回り込んで探さないとわからない入り口から、階段を上って2階へ。 海がテーマの映画で使われたのか、船のオールや救命用浮き輪などがディスプレイされています。

USJもびっくりのリアルさ加減。

店内は本当に倉庫のようで、集まってくる家具をどうにかかき分けて配置して、カフェにしたんだろうなぁという感じ。如何にも取ってつけたような手作り感のあるバーカウンターが、それを如実に感じさせます。

パーティクルボードの手作り感あるカウンター。吊られている照明は、日本の大正時代を思わせるデザインです。

カフェテーブルも、椅子も、置かれている家具も、何もかも不揃い。たぶん「このカフェのために」買ったものが1つもないからでしょう。でもなんか統一感があるのが不思議。空間全体の色のトーンが揃っているからでしょうか。

まずこの「箱」自体が格好よくて、外側にも剥き出しになっていた躯体のレンガを、内装にもそのまま活かしているんです。古い家具が似合うように空間にエイジングをかける必要もなく、最初からかかっている状況、最高ですよね・・・。おそらく全面レンガのまま使ってしまうと本物の山小屋みたいになってしまうので、途中で白の塗り壁に切り替えてあります。それもまた、テキトーな感じで・・これ位のアバウトさ、好きです。

ソファに座るか、ソファを眺められる位置に座るか・・・悩ましかったです。

窓のサッシを黒にしてあるので、結構そこで引き締まって空間全体としてはマニッシュな、格好いい感じに仕上がっています。

この「倉庫」が空間のベースなので、集まってきた家具がとても映えます。何で使われたのか、ビッグサイズな望遠鏡も、悪い人が葉巻を咥えて座っていそうな革張りのソファも、工業製品感満載の吊り照明も、バラバラ且つ夫々の主張の強さにも関わらず、なぜかしっくり馴染んでいるんですよね。すごい。

かといってチラリと上を見上げると、華奢な曲線を強調したシャンデリアが、ポッと1つ浮かんでいたりして。空間のメリハリのつけ方が上手すぎます。さりげない天井の廻り縁で、こちら側は打って変わってクラシカルな雰囲気を帯びているという。

退廃的なロマンチックさを感じる天井周り。

窓際には誰が座るでもない書斎のようなスペースが設けられていて、すぐ側にはテーブル席があって、本当に物置きとカフェの境界が極めて曖昧なんですよね。物置きでチルしてるお客さんが結構いるという状況も、何だかシュールで面白いですし。

所狭しと無造作に置かれているように見える家具たちも、見ていて退屈しません。デスクに置かれている透明のMacもなんだかレトロ。

ちなみにコーヒーには結構こだわっている様子で、カフェラテもおいしかったです。(台湾のカフェラテはとにかくたっぷりで、飲みごたえありです。)

映画監督の倉庫カフェ、ちょっと現実を抜け出したい時にぴったりです。