魅惑の模様島, 金門島 – 台湾
こんにちは。上海はふたたび外出が気持ちいい気候になりました。晴天が続き、風も爽やか。週末ともなれば各レストランが屋外席を設けていて、外で一杯飲まないと損した気分になるような、そんな街です。
上海は位置的には海に面しているとはいえ、普段人々が生活しているのはそこから遠く離れた市街地。賑やかで楽しいけれど、たまにスッと息抜きしたくなることも。
日々塗り替えられる都会の景色は刺激的でつい惹かれてしまうけれど、昔からずっと変わらない景色の中にある暮らしを眺めるのも同じくらい好きです。
というわけで、今回は2018年4月に訪れたとある島を、当時撮影した写真で再訪してみたいと思います。
台湾はいくつかの離島を有しており、そのうちの1つに金門島があります。沖縄県石垣島が沖縄本島よりも台湾に近いことは有名ですが、金門島も似たような島で、その位置は中国本土にかなり接近しています。
中国に海側から入国する場合、基本的には飛行機利用となりますが、この金門島からはフェリーで中国の廈門(アモイ)に入国できるという、珍しい位置付けの土地でもあります。
船で30分で中国に着いてしまう位置にも関わらず、金門島は台湾文化と土地独自の閩南(ミンナン)文化を見事に保ったとても美しい島でした。特に台湾本島とはまた違った、島独自の建築様式からなる集落には目を奪われました。
金門島独自の建築は閩南式建築と呼ばれ、対岸の中国福建省にもこれに似た形の建物が多数存在していることから、過去にこの一帯で発展したものだと考えられています。基本的には中国の伝統的な四合院形式となっており、レンガを多用していることは共通していますが、細部の装飾等に土地毎の違いを見ることができるそう。
まず島の中にはいくつかの集落があり、島の人々が住んでいるのですが、その集落が個性的でした。前述の閩南式建築が集合してできているのですが、なんというか、集落自体が一つの大きな建築物のようなのです。
家と家の間に敷かれた道路や通路まで、全て建物と同じレンガや石で構成されているので、集落全体としての「素材感のまとまり」がすごい。集落毎に色調が整っていて、そこはかとない居心地の良さを感じます。
建物だけでなく通路まで一体化してテイストを揃えることで、各集落の個性も外部から見たときにとてもわかりやすかったです。
閩南式建築をベースに各集落が少しずつ色や形を異にする様子は、金門島の独自文化の中にさらに光る個性を見るようで、とても興味深いものがありました。
素材にフォーカスしてみると、閩南式建築は基本的にレンガと瓦で構成され、タイルで装飾されていました。
レンガは様々な形・色のものがあり、これらで幾何学的な模様を作り出して壁面や塀を飾るのも彼らの手法のようです。レンガの色味は総じて赤茶色で没個性的ですが、そこから浮かび上がる美しい地模様はとても見応えがあります。
そして、元はこの為に金門島を訪れたといっても過言ではない、マジョリカタイルの装飾。
建物の入り口付近を鮮やかに彩るこれらのタイルは、閩南式建築の大きな特徴の1つです。
南国台湾らしい瑞々しい色合いのものからシックな色合わせのものまで、見ているだけで心が潤います。
上下左右で異なる柄を使っていると柄同士が喧嘩しそうなものですが、全体で見ると収まっているから不思議。歩いていると無限に組み合わせが出現するので、各戸のタイルを見て回るだけでもとても楽しめます。
金門島ではこれらの建物が民宿になっていて、観光客が宿泊可能なのも嬉しいところでした。現地の人々が住む集落を外から見るだけではなく、実際に中に入って暮らしや建築の様子を知ることができれば少し楽しみが深まります。
島には繁華街もあり、そこには集落とは異なる「よく見る台湾の街角」の風景が広がります。これらの街と集落の対比も、この島の面白い特徴かもしれません。
人々は穏やかで、観光客慣れしてフレンドリーだけど商売っ気はなく、彼らの過ごす日常は私たちとは無関係な平行世界としてそこにあるような、不思議な感覚でした。
奇しくも現代の忙しい暮らしを少し見直すタイミングとなっている今、少し遠くの世界に思いを馳せてみました。この騒動が収まった時私たちの暮らしがどう変化するのか、今は想像もつきませんが、変わらず色んな物を見たり体験しに行くことができる世界であってほしいと願います。
それではまた、どこかのスペースで!