空と海を享受する都市, サンフランシスコ – アメリカ

1月下旬、曇り空の上海を抜け出してアメリカはサンフランシスコへ渡りました。冬のサンフランシスコは、さらりとした空気と少しグレーがかった色味の青空がきれいな街で、個人的に好感をもちました。アメリカ本土に渡った経験がなかったため、漠然とした印象しか持ち合わせなかったのですが総じて自由で前向きな空気があり、アメリカという国の個性を強く実感させらされました。個人レベルでは把握しきれない広大な土地と社会の存在。

一方で視点をミクロに絞ると、道端で物乞いをする路上生活者も多く、福祉面における不安定さを象徴するような光景も日常的に見られました。とはいえ路上生活者とフラットに会話する通行人や施しを行う人の姿も見られ、ここに住む人々がこの社会状況をどう捉えているのかは少し聞いてみたくもありました。個人主義が行き届いており、大勢が同じベクトルへ向いているという感じはなく、人種もバックボーンもそれぞれに違う民族が集まる地域のざっくばらんさを、過去に経験した中でもっとも肌で感じた国でした。

中心市街地は人の往来がさかんで、路上演奏や大人数でのデモが行われる様子も。

と、ひとしきり地域の印象を語ってしまいましたが、今回もしっかりスペース(空間)を見学してきました。ざっくりと、サンフランシスコの都市空間について感じたことを書く回です。

サンフランシスコといえば・・・のゴールデンゲートブリッジ。海辺には大量のヨットが係留され、マリンスポーツを楽しむ人の多さを窺わせた。

街自体は想像よりもかなりコンパクトでした。ものすごい坂の量ではあるものの、体感では山手線の内側には遠く及ばず、もっとも人の多い中心市街地は数時間あれば歩いて回りきれる程度の広さです。

坂道が多いせいか、車で移動する人が多い模様。 公共交通機関に加え、UberやLyftを使っての移動がごく一般的。

その他にも○○地区、△△地区と旅行書上で分解されたエリアがいくつかありますが、1つ1つはコンパクトで数時間でざっくり見て回ることができました。

中心市街地(ユニオンスクエア付近)から徒歩2km程のSOUTH BEACH地区。ここまでくると人出もまばらに。

地区間は少し離れているので、MUNIと呼ばれる地下鉄と路面電車が合体したような公共交通機関や、バスを利用して移動しました。歩くこともできなくはないですが、高級住宅地を歩いていたかと思いきや、気づくと治安が良くなさそうなエリアに足を踏み入れていたりと、場所によっては骨が折れます。

ほとんどの地域では路上もそこまで人が多くないため、徒歩移動も気分爽快。

とはいえサンフランシスコでは一般的な建物も色合いや形状がとても魅力的で、道を歩いていても目が退屈することはありませんでした。ヨーロッパは歴史的建造物の多さからか街並みの色合いがシック、アジアは街頭広告の多さからか、混沌として主張の強い感じがありますが、こちらでは街頭広告を殆ど見かけず、また建物の色合いは主張の強すぎないパステルカラーであることが多かった印象。冬のサンフランシスコは晴れの日も空の色が薄く、少しグレーがかっていることが多かったのですが、これらの建物はその色にとてもマッチしていると感じました。

淡いグレーグリーンと暖色(オレンジ・イエロー)を掛け合わせたマンション。まるで幾何学的な模様を眺めているよう。
白・ブルー・グリーンとランダムに塗られた窓周りが軽快な印象のビルディング。色配置のバランス感覚が優れている建物多数で見飽きない。
映画で観るようなThe Americanな建築物。ヨーロッパのそれとは一風異なる色使い。

街自体がコンパクトで、連なる家々も意外にもコンパクト(とはいえ購入すれば億以上だそう・・・)。ですが、絶対的な土地の広さに加え、建築高さ制限があるのか空が広く、どこを歩いても窮屈さがないことには驚きでした。

市街地からMUNIに乗って30分ほど移動し、海側のエリアにも足を延ばしました。ここは住宅地であると同時に、サーファータウンとしても知られています。

同じ形、違う色と装飾の家が連なる。

多少混み合った市街地からも、30分路面電車に揺られていればこの土地に来られるとなると、全くもって都市生活の気ぜわしさを感じないなぁと思いました。

公共交通機関と徒歩で海まで行けてしまう気軽さに加え、どこにいても頭上には広い空・・・ひたすらに人々の心を開放させる方向へと、場所のベクトルが向いている気がしました。リゾート地ではない(=人々がバカンスを求めてやってくる場所ではない)にもかかわらず、そういった作用を人々にもたらすとすれば、それはサンフランシスコ住民の大きな役得と言えそうです(羨ましい・・・)。

15分に1本やってくるMUNIに揺られてのんびりと市街地〜郊外地区を行き来する。

この街にはサーフカルチャーが根付いていると前述しましたが、実際には海流が強く水温も低いとのこと。私はサーファーではないため、ここがどの程度有名なサーフスポットなのかわかりませんが、厳しそうな環境とは裏腹に楽観的でゴキゲンな空気感の街で、彼らがここに集まりたくなる気持ちはよくわかりました。(なお車で3時間ほど南下すると、大勢の人がサーフィンを楽しむスポットがあるそう)

サンフランシスコで一番有名なサーフショップもこのエリアにある。

海辺は日常的に人々や犬の散歩場所となっているようで、延々とつながる砂浜のずっと遠くまで人が歩いている様子が見られました。ジョギングやヨガに励む人や、ただ何をするでもなく佇む人も少なくなく、冬でもしっかりと降り注ぐ暖かい太陽の存在が、人々を戸外へ誘い出すのでしょう。

曇りの日。昼間は気温が上がるため、海辺はまばらな人出が続く。

この海辺の街はサードウエーブ系のコーヒーショップやカフェ、サーフショップ、魚料理のレストラン、インテリア雑貨店など、程よく点在させていました。地元住民も憩い、また外からの観光客も訪れ、決して混み合うことはないものの常に人出のある地域でした。

温かいコーヒーを買って海へ。

今回サンフランシスコを訪れてわかったのは、市街地と自然が近接しているコンパクトでとても快適性の高い街であることでした。またカラリとした穏やかな気候も手伝って、都市にもかかわらず屋外活動を楽しみたくなる要素も揃っており、規模感と環境のバランスが人々を魅了するのがとても理解できるなぁと感じました。

都市をぐるぐると歩くと、点と点が線になり、そのうちに少し面になり、街の魅力にどんどん引き込まれてしまいます。サンフランシスコはその小ささ故に全体像を把握しやすく、住まずとも数日間の街歩きにもとても適した魅力的な街でした。

それではまた次回、別のスペースで。