丁寧なプレゼンテーションとしての空間, サンフランシスコ – アメリカ
こんにちは。世間はコロナウィルス一色になっていて、ついニュースを追って時間を過ごしてしまいがちですが、こんな時こそ意識して楽しいことを探していきたいなぁと思っている近頃です。イベントやLIVEが中止になって残念な反面、色んなアーティストがYoutubeやインスタグラムでLIVEをしたりしていて、いい時代になったもんだ・・・!と感じることも。きっかけがウィルスだけに事のマイナス影響が強調されがちですが、こんな時こそ、これまで思考停止的にこなしてきてしまった事柄を見直して、より快適に暮らしや社会が回る仕組みを皆で考えていけたらいいですよね。
さて、そんなこんなでスペース紀行は前回に引き続き、サンフランシスコからいくつか空間を空輸してお届けします。
前回は街全体についてざっくりと書き起こしましたが、今回はより小さな空間にフォーカスしてみます。
サンフランシスコはシリコンバレーにもほど近く、車で1時間ほど南下するだけで、様々なIT関連企業が社屋を構えるエリアへと出向くことが出来ます。
その中にはAppleやGoogle・Facebook・Youtube・Intelなど名だたる企業も。セキュリティのため出入りを厳しく管理している企業もありましたが、AppleとGoogle、Intelにおいてはビジターセンターや専用ショップを設けて一般参観を歓迎している様子でした。
一通り訪れたこれらの企業の中で、群を抜いてユーザーを意識していたのは(やはりというべきか)Appleでした。彼らは本社屋やその周辺エリアを完全にクローズ、部外者の立ち入りを禁じていますが、代わりにしっかりとしたビジターセンターを建設し、そこで見学希望者を受け入れています。
センター内では、立ち入り禁止の本社屋敷地内をiPadを通じてAR体験できます。
通常のApple storeのように商品を体験できるエリア、限定グッズ売り場、カフェも併設されており、じっくりとAppleの世界観やプロダクトを堪能できる内容になっていました。
シンプル且つクリアで直感的な空間づくりはAppleのプロダクトが持つイメージを上手く明確に具現化しており、いつまでも滞在していたくなるような快適性も、まるでApple製品そのもののようでした。(Appleの差し金ではありません・・)
決して期待を裏切らないビジターセンターに、ユーザーを惹きつけることに余念のない彼らの姿勢を見た気がします。
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サンフランシスコ市内も少しご紹介。
1件目はAnchorというクラフトビール会社です。街中にごくひっそり(といってもアメリカ、それなりの規模感ですが)存在しており、工場脇のビアバーは一般客に開放されていて、気軽に入ってビールを飲める感じ。この会社のビールを味見するために遠方からはるばる来客、というよりは地域住民に慣れ親しまれていて、昼間からジョッキ片手に世間話をしたり、PCを開いて仕事するために来ている印象でした。
2件目はHeath ceramicsというタイルとセラミック雑貨(器など)の会社。こちらも市内に店舗併設型の工場を構えていて、がっつりと製作過程を見せる営業スタイル。
内部は外側から想像がつかない明るく広大な空間でした。入り口を入ると正面に工場を臨みますが、トップライトからの自然光がとても明るく、「こんなところでタイル作っているの・・・!?」と予想を軽く上回る気持ちいい空間。傍に併設された店舗も、大きな窓と高い天井が存分に活かされています。
これらの空間に共通して感じたのは、作り手である彼らの、ユーザーへのプレゼンテーションの丁寧さと真摯さです。
会社の内側を見ることで(たとえそれが丹念に見せ方を検討されたものだとしても)、ユーザーはそのブランドに対して親近感を抱くようになります。
その商品を知っている・使っているだけの状態から、より深い興味を持つようになり、のちにブランドへの愛着に発展する、というストーリーをしっかり意識していると感じます。
「日常生活にそのプロダクトが存在する世界観」を体験できる空間は、そのブランドのテーマパークとも言えそうです。
そういった作業を当たり前に、レベル高くやっているのは、彼らがその必要性を強く認識している証拠でもある気がします。
しっかりとロジックを立て、丁寧にプレゼンテーションされるそれらの空間は、ユーザーはもちろんのこと、内部スタッフへ向けたブランディングにも寄与していると感じました。
この姿勢や手法こそが、このエリアが素晴らしいサービスやプロダクトの発祥地になっている要因の一つかもしれない、そんなことを感じた旅になりました。
それでは、また別のスペースで!